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2020年07月09日 (木) | 編集 |
2020年は日本の食育推進にとっては大きな節目になるような気がする。
2005年に食育基本法が公布され、第1次、第2次、第3次と食育推進基本計画が重ねられ、(当事者の方々には失礼な言い方かもしれないが)、第4次はいよいよ将来展望を明確にもつ食育の体系が示され、日本の特長を発揮するシステマチックな色合いの食育(今までを日本の食育第1期と呼ぶなら、第2期に入る?)をひそかに期待していた。

少なくともSDGsのような視野・視点を包み込んで考えたい、考えなければならないと願っているときに、世界中隅々に感染拡大する新型コロナ感染症が大きなうねりで押し寄せてきた。
日本も食や食育をどうするのか、と。
第4次食育推進の方向や役割検討の緊急性がぐっと高まってきたようだ。

“第4次基本計画本文案に対してのパブコメではなく、第4次基本計画作成に向けて、第3次基本計画の見直すべき点や第4次基本計画に盛り込むべき課題等について、あらかじめ広く意見を募集することを目的とする”という情報を見て、勇気を出して以下の投稿をした。
2000字以内にまとめることができず、尻切れトンボになっている。
書いてみて、これは自問自答すべき内容だ、とますます緊張している。

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パブリックコメント

「第4次食育推進基本計画(以下、第4次計画)作成に向けた主な論点」(以下、第4次案)を拝読しました。詳細な現状分析とその解決策検討に敬意を表します。しかし、「食生態学」(人間、生活、環境とのかかわりを重視し、人間らしい食のあり方とその持続可能な実現を模索し、実践・研究・理論の循環を重ねている)の観点から、疑問や課題が多々あります。諸課題の根元に当たる以下の4点について、検討を希望します。

1.主要な用語の概念、特に「食」について、第4次計画で共有する概念や概念図を提案してほしい。関係者で共有し、かつ多様な場での食育計画や実践に展開しつつ、当該概念の吟味・進化・発達が期待される。

〇「食」について:
食育基本法では、直接的な概念規定はされてないが、基本法の前文中の16か所に鈎括弧付きの「食」を用い、食育で求める「食」は、生産・加工・流通・食事づくり・食べる・食情報の受発信や交流・生きる力の形成・地域社会の形成、これらの循環性を、また健康・文化・社会・環境等とのかかわりの多面性や多様性を強調している。これを受けて、「食」について様々な見解が出される一方、あいまいなまま食育の具体的活動内容や方法を決めてしまう例が少なくない。多くの人が共有できる「食」の営みの視野・イメージ形成につながっていないように思う。加えて、「食」の営みは個人、家族、組織や近隣地域、国、世界、地球と奥行きを広げて、重層的にダイナミックに営まれている。一個人の小さな食行動の変化がその個人の視界を超えて、地球全体の「食」の営みに影響を及ぼすことになる。地球上一部の環境変化が複合的に影響して、多くの食行動に影響する。こうした「地域における人間の食の営み」のダイナミックスを全体俯瞰できるような概念図が必要である。“こんな食の営みにしたい”等、概念図をのぞき込んで話し合い、それぞれの食育計画へとつなぐ一枚の「食」マップになる。

〇「食」を構成する主要な用語である「食行動」、「食生活」、「食物」(栄養素、食材、料理、食事)、「食環境」(フードシステム、食情報交流システム)、「食育」等について:
各用語の概念規定と、「食」の中での位置、役割等についても検討が必要であり、検討成果はこれらの総体としての「食」の概念の進化、発達につながり、食育全体の方向や内容に影響すると考えられる。コロナとの共生の“厳しさの体験”を多くの人々が共有している2020年に準備される第4次計画では、「食」の概念の共有なしには、協働や連携の議論もできないと考える。

2.多様な場で多様に展開する食育関係者が共有できる長期展望の「食育のゴール」を提案してほしい。
今までの計画では抽出された重点課題別に行動目標や対応した評価が行われているが、それらが全体として何に向かっているのかが見えにくい。知りたいことは、これら個々の目標達成が前項の「食」の概念や概念図のどの部分につながり、全体の向上に貢献できるか、しているか、すべきか、等である。多様な食育が、それぞれの課題や方策の検討に、共有できる長期展望の「食育のゴール」が明記されていない。
この「食育のゴール」検討に当たって、重要なことの一つは、「環境の質」と「人間生活の質」の関係をどう考えるかである。従来の多くと同じに、「人間生活の質」向上の条件として「環境の質」向上を位置づけるのか? 『「人間生活の質」と「環境の質」の「共生の質」向上』を目指すのか? 
すでに国際社会の合意を得、2030年の実現を目指して、多様な実現への努力が進められているSDGsの場合は、「共生の質」向上の視点である。既に日本人は環境保全や有効活用をしつつ、食や生活文化をはぐくみ、世界最高の健康水準の実績を重ねてきた。「人間生活の質」と「環境の質」の両者の共生を実現してきた実績を持っているととらえることができる。こうした日本の「食」の特長を存分に、持続可能に発揮する長期展望(目標)の「食育のゴール」の提案または、検討の気運を高める提案をしてほしい。

3.「食」育関連の諸施策、指針、ガイド等について、上記1,2で検討した視野・視点のシステムズアプローチで統括し、進化しつつ、活用するシステム構築をしてほしい。
食生活指針、食育ガイドをはじめ多くの施策で、その都度吟味・作成・活用された成果物が課題に合わせてシステマチックに活用されていない.食育の調査・研究の中心的、緊急の課題の一つであると考える。

4.食育(推進)の主体は、(病気の人、障害を持つ人、外国にルーツを持つ人などを含め、
一人残らずの)国民であり、行政や組織体等はその支援側と認識している。しかし、従来からの踏襲か、第4次案にも、“食育の主体である行政や組織等”と書かれている。
上記1から3の視野・視点で、「食育の主体」をどうとらえるかの検討をし、「食」の概念図に位置づけてほしい。


2020年07月09日 (木) | 編集 |
第8回日本食育学会の特別講演は新型コロナウイルス感染症拡大により、参集による開催が取りやめになり、誌上開催になりました。
田中弘之会頭をはじめ関係者の方々は精力的な準備をしておられましたので、無念のことと思います。
私も総会特別講演の機会をいただき、張り切って準備をしておりましたので、とても残念です。
とりわけ、新型コロナウイルス対策の一環で、自宅での食事の機会が増える中、マスメディアやSNSで関連する食情報も多くなり、全国的に、家族ぐるみで「食」への関心が高まってきたことは、ありがたいことだと受け止めていました。
しかし、ほとんどが「料理」情報で、肝心の「食事」情報が少ないことを嘆き、「食事」についての基本的な発言が必要だと、悶々としておりました。
日本食育学会での特別講演は、貴重な機会でしたのに。

昨日、誌上開催の講演要旨集が届きました。
「日本の食・食事でとらえることの大事さ」検討のたたき台にしていただければ幸いです。 
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特別講演Ⅱ「食育と和食文化の融合」

足立 己幸
女子栄養大学名誉教授・名古屋学芸大学名誉教授 

はじめに:本学術大会のコンセプト“つなぐ、織りなす”に触発され、本講演では、人間の「地域での食の営み」、「食行動」や「食事」自体が、しなやかでたくましく“つなぐ、織りなす”でつくりだされていること、そうした食の本性を最大限に発揮する「食」育が望まれていること、その実現には、日本人の食生活文化の基礎になってきた和「食」の底力発揮が必須であることを、具体的な事例を共有しながら、考えたい。

1.実践現場から求め続けてきたのは「食」育
○“私や家族は、何をどれだけ、どのように食べたらいいの?”の質問に、その人の生き方、くらしや地域とのかかわりの中で、実行できる答え探しを支援したいと「食生態学」を創設し、仲間づくりをすすめてきた。栄養素や食材料だけでなく、グーッと人間につながっている「料理選択型栄養・食教育」の提案。その具体的な方法は日本人が生活文化の中で育くんできた、和食の智恵「主食・主菜・副菜を組み合わせる食事」にあった。栄養、味、食生活力形成、共食、食材自給率などの各面がプラスにつながっていることを検証し、栄養・食教育/活動につなげてきた。1食のエネルギー量を弁当箱のサイズで選び、主食3・主菜1・副菜2で詰め合せる「3・1・2弁当箱法」開発は「適量でおいしい1食」が簡単に準備でき、世代を超え、栄養リテラシーの差を超え、家族や仲間がつながりやすい。栄養素や食材料選択法を包み込んだ「食事」育であり、「食」育であり、多くの実践の輪をつなげている。

○「地域の食の営み」の循環全体がうまく回ることを視野に、自分(たち)の得意技や役割を確認し、質の高いつながりを果たす。生産から食卓まで、生きる力、地域力の形成、次の労働力形成へとつながり、高まっていく。まさに、「食のパーツ育」から、パーツのつながりを重視する「食」育の具体的視野である。

2.今、日本の行政や教育がつながって、全国展開をすすめているのも「食」育
例えば、食生活指針(2000年、2016年一部改訂)、食事バランスガイド(2006)、食育基本法(2006)、健康日本21(第2次)(2013)、第3次食育推進基本計画、たのしい食事・つながる食事(2016)、健康な食事(2017)、日本の栄養政策(2019)、等々。

3.国際的に評価されてきたのは和「食」
○ユネスコ世界無形文化遺産登録の要件は特定の和食材や和料理だけでなく、和「食事」や和「食文化」
○国際学会や国際協力で評価が高いのは日本各地の「地域性を活かした食事法やその食環境づくり」。

4.今、全世界がゴールを共有し、その達成に貢献できるのは、“和「食」を活かした「食」育”
○SDGs の「5つのP」と17のゴールのすべてにつながる
○世界中に浸潤する「新型コロナウイルス」の感染拡大防止も発症防止も、ひとり一人の健康力と人々のつながり力への期待。
これから:「東京栄養サミット2020」、「東京オリンピック・パラリンピック」「第22回国際栄養学会」「第8回アジア栄養士会議」、等次々に“日本の食の魅力”発信のチャンスが来ている。この機に、“「食」育と和「食」の融合”の魅力、それを支える日本「食」育学会への期待を実現させたいと願う。


【プロフィール】(本文:MS明朝、10.5ポイント 全角50文字×4行(200文字)以内)
NPO食生態学実践フォーラム理事長。管理栄養士、保健学博士。1958年東北大学農学部卒。東京都保健所・衛生局技師等を経て、1968年より女子栄養大学へ。教授、大学院研究科長等を経て、2006年から名誉教授。同年から名古屋学芸大学大学院教授、2011年から名誉教授。同大学健康・栄養研究所長。この間、ロンドン大学人間栄養学部客員教授、カーテン大学公衆衛生学部名誉教授、厚生省「食生活指針」策定委員会委員等。




2019年06月18日 (火) | 編集 |
標記の論壇1)を読み、NPO法人食生態学実践フォーラムの機関誌名を「食生態学―研究と実践」とせずに「食生態学―実践と研究」にこだわってきた2)私は、深い感銘を受け、大きな勇気をいただきました。

感銘を受けたことはたくさんありますが、圧巻は、アクションリサーチの古典といわれる1931年公表のレヴィン(Kurt Lewin)論文とその解説等を取り上げ、レヴィンの研究哲学やアクションリサーチのキーになる文章の一言一句を丁寧に読み解き、論をすすめていることです。
今「実践と研究」をめぐるトレンドな方法論の一つであるアクションリサーチが既に、私が生まれた1936年以前から、熱っぽく議論されていたという事実を今まで知らなかったことを恥じ入り、そして感無量です。

最近はなぜか(栄養学分野だけかもしれませんが)、科学的根拠となる研究や文献のシステマテックレビューについて、新しい研究ほど評価が高く、ややもすれば、当該概念について創生期の難産のプロセスや背景を含めた根源的な議論が少なくなりました。
安定期に入った新データーの量的研究成果が優先され、わかりやすくまとめられた論文や報告書が多くなっています。
激動する環境変化や生活の多様化がすすむときだからこそ、当該概念の原点・中核の議論が必要と思います。
用語だけが独り歩きし、学会誌掲載というお墨付きで、行政や教育の行動指標や評価指標に使われ、全国的に同じ方向に実施・普及されていくようで、不安・心配をしていましたから。

勇気をいただいたことも多くあります。
とりわけ、「食生態学」実践と研究の過程で表現したい内容の適切なキーワードを得ずに、混線していた次の点について、もつれた糸解きの基を得たことです。

(1) アクションリサーチとアドボカシーの関係を明確にする論考の中で、両者の関係や関係の強さはいろいろあリ、アクションリサーチは実験型、組織型、専門職型、エンパワーメント型の4種に大別して考えられること。
その中の実験型についてレヴィンは「『科学的アプローチによって、社会問題や社会生活の改善のための仮説の生成、その仮説の実験的な実践、評価、改善』という循環的なプロセスをたどるリサーチである」と説明していると紹介されています。
社会生活等の改善から出発していること、そのために生成した仮説を“実験的な実践”で検証していること、これらの循環的なプロセスをたどるすすめ方を価値づけていることです。
食生態学では未成熟であっても仮説生成を重視し、“生活実験”“地域実験”と名付けて、まさに仮説の実験的な実践、評価、改善を繰り返してきました。このときに「食の営み」の特殊性を基礎に、学習者主体、住民主体、当事者と共にすすめる実験的実践であることを特徴としています。実験的実践はそうでなければ実行できないです。
こうした思いが、本稿の冒頭に書いた「食生態学―実践と研究」へのこだわりになっています。

(2) アクションリサーチという用語を使っていないが、その思想や方法論を同じくして既に活動してきた実績を評価していることです。
論壇の事例に挙げられている岩永俊博グループの活動理念や地道な地域活動については、岩永医師が国立公衆衛生院在職の頃、私は(同院行政栄養士研修の「公衆栄養」を担当させていただいた関係で)岩永医師とたびたびお会いし、“現場でのニーズに寄り添った地域健康づくり実践”の必要性、プログラム形成や仲間づくりの必要性やむずかしさ等について話し合い、教えていただいていました。
「こうした地域活動は研究とは言えない」という大学・研究機関の関係者の評価が多い中、岩永医師は「研究と言われなくてもいい。地域の人や関係者が必要なんだから」と繰り返され、自分たち自身は割り切れても、若い人々を誘い込めない社会的な難しさ等を、話し合い、慰め合っていたことを思い出します。
論壇の中で「岩永医師の……地域の夢を追いかけて実践されてきた活動は、参加型であり、民主的であり、かつ社会の変化をめざしている。それだけではない。見かけにとらわれない本質を取り出し、よりよい研究方法を求める姿勢が常にみられている。……過去、アクションリサーチという言葉を使っていなかっただけである」の一節に、大きく納得でした。
そして、(神馬教授の表現を使わせていただけば)アクションリサーチの用語は使っていないが、「食生態学―実践と研究」もいっしょに褒めていただいたようで、大変うれしく、勇気づけられた次第です。
1931年の原点に立ち戻って、アクションリサーチの研究哲学をふまえた「食生態学―実践と研究と……」へとシフトアップしてゆきたいです。

文献
1) 神馬征峰.アクションリサーチ:知と信の融合を超えていけるか.日本健康教育学会誌.2019;27-2.137-142.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/27/2/27_137/_pdf/-char/ja
2) 足立己幸.「食生態学―実践と研究 第10号」記念に感謝.食生態学―実践と研究.2017;10.4-7.

2019年06月03日 (月) | 編集 |
5月26日、NPO法人食生態学実践フォーラムの2019年総会研修会は、
“「食品ロス」「SDGs」と食生態学―食生態学を基礎に何をすべきか、何ができるか”
をテーマに基調講演・実践課題からの問題提起・討論を行いました。
大変熱っぽい研修会になりました。
この内容とその後の議論の詳細は、NPO機関誌「食生態学-実践と研究」13号で特集を組みますので、ご期待ください。

さて、終了直後から、私の指定発言の内容について感想や質問が入り、特に標記について知りたい・やってみたいと関連する質問が寄せられるので、ここに概要を書きます。

1.指定発言のテーマは“食生態学から「SDGs」「食品ロス」をどう見るか”で、図1の内容構成ですすめました。

冒頭で私は、国連サミットで「SDGs」が採択・公表されたときにすごくうれしくて、興奮したこと。
理由の一つ、2030アジェンダは、開発途上国だけでなく先進国自身が取り組む普遍的な課題であり、取り組みの過程で、誰一人として取り残さない・世界中一人残らずの人が共有できる基本的で包括的なこと。
もう一つはその取り組みにあたって、17のゴール・169のターゲットが提案されたことです。
大きな目標に向かって入口が17(169の入り方を含む)もあって、これらが多様に関係し合っているので、どの入口から入っても「持続可能な世界」を実現することに関わり、貢献できる期待と可能性を示したことです。
とすれば、一人ひとりがそれぞれ一番大事にしている課題について、得意なスキルやネットワークを使って主体的に参加することができる自由、でした。
しかも、「SDGs」のゴールとターゲットは、「統合され・不可分なこと」ですから、どれを入口にしても開発目標に統合されつつ届いていくことになります。
とすれば、今までの実績(失敗も含めて)をばねにして、やりたいこと、得意なことから自分にあった入口を決めて実行してよいのです!
今まで食生態学は、人間の食や生きる営みについて、全体俯瞰統合的に活動目標や評価の検討を心がけてきました。
が、所詮、自分が育ててきた限られた視野・視点の全体像の中での全体俯瞰に留まりがちなことを、どう脱皮できるかを悩んでいました。
「SDGs」は食生態学実践と研究が求めてきた方向と重なり、かつ全地球からの全体俯瞰の提案に見えました。
全地球を視野に、一人ひとりを大切にした「SDGs」の大きなマップを広げて、その中に食生態学実践や研究のプロセスや課題をプロットする。
逆に、食生態学の概念図等に「SDGs」の17のゴールをマッピングすると、国際社会で共有する視野・視点での評価や課題発見や特徴確認ができそうだ! 
すぐ、国連広報センターが作成した17ゴールのロゴカードをコピーして、バラバラにして、自分発想で順番を変えてA4紙に並べ、スマホ写真で記録し、タイトルを付けて、眺めるという一人ゲームをして、興奮したのでした。

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2.「食生態学のめざすこと」の方向を「5つのP」で確認する

まず、「SDGs」の包括的なゴール・持続可能な国際開発のキーワードとして、多くの人と共有しやすいように教材等で使われている「5つのP」を指標に、「食生態学」のねらい、食生態学の視座で検討してきた「栄養・食教育」の定義、これらを基礎にすすめている「NPO法人食生態学実践フォーラム」の目的や活動のコンセプト(文章中のキーワード)を重ねてみました。
「5つのP」とは、People人間、Planet地球、Prosperity豊かさ・繁栄、Peace平和、Partnership連携と説明されています。
女子栄養大学に「食生態学」研究室設置が認められた1969年から現在まで、一部表現法の修正はありますが、「食生態学のめざすこと」と「5つのP」はしっかり重なっており(Prosperity とPeaceに重なるのが、“生活の質と環境の質のよりよい共生”)感慨深く、これからの実践と研究の方向に展望を得た感じです。
しかし、その視野について食生態学では中核に日本を置き、その背景にやや薄く他の諸国を置き、さらに背景に他の生物たちも含めた地球全体を描いているのです。
(自分ではそうでないと考えてきたつもりですが)現実には国ワイドに留まり、地球ワイドとは言えないことの警告を得た感じです(図2)。

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3.「人間・食物・地域の関わりの図」(「地域の食の営みの図」)(概念図)に
「SDGs」17ゴールをマッピングして、食生態学の役割や特徴を確認する


食生態学がめざしている具体的な内容について、「SDGs」の視野・視点で全体俯瞰を試みました。
図3は食生態学実践や研究で下敷きのように使っている「地域の食の営みの図」(概念図)に、該当する「SDGs」17のロゴカードを置き、関連の深さや重要度の大きさでカードのサイズや形を変えながら、マッピングした1例です。
ⓐ直接関わり、実践・研究の環を重ねながら、ネットワークや環境づくりをすすめていると自己評価するカードは「地域の食の営みの図」の中に、
ⓑ間接的だが関わっている、または個人的な活動はすすんでいるかシステム化して多くの人々と共有できる段階に至ってないと自己評価するカードは図の縁に、
ⓒ直接ではないが関わりの重要性を理解し、計画の視野に位置づけたいカードはそれぞれの後方に置いてみました。

○“「SDGs」のゴールとターゲットは、統合され・不可分なこと”を特徴とするので当たり前ですが、17のカードに該当する場所はたくさんあり、ロゴカードをあちこちに貼りたくなります。
今回はあえて1枚だけにしました。
食生態学が「大事にしていること」や「しなければならないこと」の濃淡を浮き彫りにしたいと思ったからです。

○食生態学をふまえた教育的アプローチは、食の営みに関わる全ての人が主体的に「食を営む力」の形成(他へ発信・交流する力の形成を含む)めざしてすすめられるので、長い長方形にしました。
パートナーシップは各所・各課題に沿った連携、それらを巻き込んだ、より包括的な課題取り組みのための連携等が重層的に必要になり、実践効果を高めてゆきますので、長方形のままでなく全体を包む半月形に描く方がよいと思いました。
が、本稿では際限がないのでロゴカードの変形版を取り入れていません。

○図3は完成図ではなく、検討のたたき台です。
取り組む課題、関係する人や組織の活動コンセプト等に合わせて、17のロゴカードを全部使わないで、選択的にマッピングする方法もよいと思います。

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4.<地域や環境にぴったり? わたしの地域の「食の循環図」でチェック!>に
「SDGs」17のロゴカードをマッピングし、これからの活動課題を話し合うたたき台に!


2011年の東日本大震災で町全体が壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町では、その年後半から、自分たち自身で健康づくり・生活づくりができる実力をつけたいという希望が出され、町の保健センターやヘルスメイトが中心になって“「からだ・心・くらし・地域や環境にぴったり合った食事づくり」共食会”で学習・実行・家族や友人へ発信を重ねてきました。
図4は、そのワークブックのサブノート「ぴったり度アップシート」の1ページ、
“「地域や環境にぴったり?わたしの地域の「食の循環図」でチェック!南三陸町の例”
を台紙にしています。
共食会プログラムメンバーは図の下部、大変化した食環境の下、一人ひとりの「からだ・心・くらしにぴったりの食事づくり」の学習と実践をすすめてきました。
地域の生活実験での発見も少なくなく、その一つは、南三陸の海で採れる魚を主菜料理にする食事の時には栄養面や味面で良好なことはもちろんのこと、さらに“おすそわけ”などの人間関係や生きがいの活性化につながっていることが明らかになりました。
一方、町全体として、総力を挙げての豊かな海資源を基盤にした地域開発・生産活動の復興が順調にすすんでいます。
しかし、現実の町民の生活ではスーパーでの購入が多くなり、地元産魚貝類へのアクセスはうまくいかず、悩んでいます。
今回、「SDGs」17ゴールのロゴカードのマッピングで、図の下部に赤点線で囲んだ住民の生活者パワーと、上部の緑点線で囲んだ地域開発・生産者パワーとの連携・パートナーシップの充実が必要なこと、一方「ぴったり食事」等の食や健康学習の機会づくりが偏っているので、乳幼児や学童期を含む若い世代や生産・流通に関わる人々への学習の機会づくりが充分でないことが心配になりました。
抽象的な言葉で“連携してほしい”と願い出るだけでなく、国際的に共有されている「SDGs」17ゴールのロゴカードマッピングを見ながら、地域の特徴を発揮したパートナーシップづくりや食学習の検討ができるように思います。
このときの大事なことは、今マッピングされたカードを固定的に扱うのでなく、ゆるやかに、いろいろの立場や観点からカードを自由に動かしながら話し合うことです。

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参考HP
持続可能な開発目標(SDGs)とは(外務省)
Sustainable Development Goals(国際連合広報センター)
持続可能な開発目標(SDGs)(ユニセフ)


2019年05月30日 (木) | 編集 |
日本中の管理栄養士や栄養士たちが、それぞれの専門性を発揮して社会貢献する基本情報や新展開情報を共有する機関誌「日本栄養士会雑誌」6月号、巻頭1ページ「わたしと食、食とわたし」に公表されたテーマです。

編集委員会からの依頼文には
「テーマは自由です。……思い出に残る食卓、食べることの喜びなど、食の温かみを伝えることにより、あらためて管理栄養士・栄養士が食に携わっていて良かったと感じ、職業意識の向上につながることを目的としております。……」
とのこと、依頼内容の深さにかなり悩みました。
“管理栄養士として、栄養・食の専門家として何を一番大事にしているか?”と自分自身への問いかけでもあったからです。

人間・生活・地域・地球を包括する国際的な課題へ“一人残らずすべての人”をキーワードの一つにする取り組みである“「SDGs」と私たち”で書くか。
両者は密接につながっていますが、栄養・食に関する両極に位置づくような2つのテーマのどちらから書くか、散々迷った結果です。

“いいなと思う(のぞましい)食事像”を具体的に描けない子どもたちが少なくない現状の中、一人の生活者としても、栄養・食の専門家としても、2020オリンピック・パラリンピックを機会に、和「食事」の魅力を発信し・交流したいと願います。

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