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2020年07月09日 (木) | 編集 |
2020年は日本の食育推進にとっては大きな節目になるような気がする。
2005年に食育基本法が公布され、第1次、第2次、第3次と食育推進基本計画が重ねられ、(当事者の方々には失礼な言い方かもしれないが)、第4次はいよいよ将来展望を明確にもつ食育の体系が示され、日本の特長を発揮するシステマチックな色合いの食育(今までを日本の食育第1期と呼ぶなら、第2期に入る?)をひそかに期待していた。

少なくともSDGsのような視野・視点を包み込んで考えたい、考えなければならないと願っているときに、世界中隅々に感染拡大する新型コロナ感染症が大きなうねりで押し寄せてきた。
日本も食や食育をどうするのか、と。
第4次食育推進の方向や役割検討の緊急性がぐっと高まってきたようだ。

“第4次基本計画本文案に対してのパブコメではなく、第4次基本計画作成に向けて、第3次基本計画の見直すべき点や第4次基本計画に盛り込むべき課題等について、あらかじめ広く意見を募集することを目的とする”という情報を見て、勇気を出して以下の投稿をした。
2000字以内にまとめることができず、尻切れトンボになっている。
書いてみて、これは自問自答すべき内容だ、とますます緊張している。

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パブリックコメント

「第4次食育推進基本計画(以下、第4次計画)作成に向けた主な論点」(以下、第4次案)を拝読しました。詳細な現状分析とその解決策検討に敬意を表します。しかし、「食生態学」(人間、生活、環境とのかかわりを重視し、人間らしい食のあり方とその持続可能な実現を模索し、実践・研究・理論の循環を重ねている)の観点から、疑問や課題が多々あります。諸課題の根元に当たる以下の4点について、検討を希望します。

1.主要な用語の概念、特に「食」について、第4次計画で共有する概念や概念図を提案してほしい。関係者で共有し、かつ多様な場での食育計画や実践に展開しつつ、当該概念の吟味・進化・発達が期待される。

〇「食」について:
食育基本法では、直接的な概念規定はされてないが、基本法の前文中の16か所に鈎括弧付きの「食」を用い、食育で求める「食」は、生産・加工・流通・食事づくり・食べる・食情報の受発信や交流・生きる力の形成・地域社会の形成、これらの循環性を、また健康・文化・社会・環境等とのかかわりの多面性や多様性を強調している。これを受けて、「食」について様々な見解が出される一方、あいまいなまま食育の具体的活動内容や方法を決めてしまう例が少なくない。多くの人が共有できる「食」の営みの視野・イメージ形成につながっていないように思う。加えて、「食」の営みは個人、家族、組織や近隣地域、国、世界、地球と奥行きを広げて、重層的にダイナミックに営まれている。一個人の小さな食行動の変化がその個人の視界を超えて、地球全体の「食」の営みに影響を及ぼすことになる。地球上一部の環境変化が複合的に影響して、多くの食行動に影響する。こうした「地域における人間の食の営み」のダイナミックスを全体俯瞰できるような概念図が必要である。“こんな食の営みにしたい”等、概念図をのぞき込んで話し合い、それぞれの食育計画へとつなぐ一枚の「食」マップになる。

〇「食」を構成する主要な用語である「食行動」、「食生活」、「食物」(栄養素、食材、料理、食事)、「食環境」(フードシステム、食情報交流システム)、「食育」等について:
各用語の概念規定と、「食」の中での位置、役割等についても検討が必要であり、検討成果はこれらの総体としての「食」の概念の進化、発達につながり、食育全体の方向や内容に影響すると考えられる。コロナとの共生の“厳しさの体験”を多くの人々が共有している2020年に準備される第4次計画では、「食」の概念の共有なしには、協働や連携の議論もできないと考える。

2.多様な場で多様に展開する食育関係者が共有できる長期展望の「食育のゴール」を提案してほしい。
今までの計画では抽出された重点課題別に行動目標や対応した評価が行われているが、それらが全体として何に向かっているのかが見えにくい。知りたいことは、これら個々の目標達成が前項の「食」の概念や概念図のどの部分につながり、全体の向上に貢献できるか、しているか、すべきか、等である。多様な食育が、それぞれの課題や方策の検討に、共有できる長期展望の「食育のゴール」が明記されていない。
この「食育のゴール」検討に当たって、重要なことの一つは、「環境の質」と「人間生活の質」の関係をどう考えるかである。従来の多くと同じに、「人間生活の質」向上の条件として「環境の質」向上を位置づけるのか? 『「人間生活の質」と「環境の質」の「共生の質」向上』を目指すのか? 
すでに国際社会の合意を得、2030年の実現を目指して、多様な実現への努力が進められているSDGsの場合は、「共生の質」向上の視点である。既に日本人は環境保全や有効活用をしつつ、食や生活文化をはぐくみ、世界最高の健康水準の実績を重ねてきた。「人間生活の質」と「環境の質」の両者の共生を実現してきた実績を持っているととらえることができる。こうした日本の「食」の特長を存分に、持続可能に発揮する長期展望(目標)の「食育のゴール」の提案または、検討の気運を高める提案をしてほしい。

3.「食」育関連の諸施策、指針、ガイド等について、上記1,2で検討した視野・視点のシステムズアプローチで統括し、進化しつつ、活用するシステム構築をしてほしい。
食生活指針、食育ガイドをはじめ多くの施策で、その都度吟味・作成・活用された成果物が課題に合わせてシステマチックに活用されていない.食育の調査・研究の中心的、緊急の課題の一つであると考える。

4.食育(推進)の主体は、(病気の人、障害を持つ人、外国にルーツを持つ人などを含め、
一人残らずの)国民であり、行政や組織体等はその支援側と認識している。しかし、従来からの踏襲か、第4次案にも、“食育の主体である行政や組織等”と書かれている。
上記1から3の視野・視点で、「食育の主体」をどうとらえるかの検討をし、「食」の概念図に位置づけてほしい。


2020年07月09日 (木) | 編集 |
第8回日本食育学会の特別講演は新型コロナウイルス感染症拡大により、参集による開催が取りやめになり、誌上開催になりました。
田中弘之会頭をはじめ関係者の方々は精力的な準備をしておられましたので、無念のことと思います。
私も総会特別講演の機会をいただき、張り切って準備をしておりましたので、とても残念です。
とりわけ、新型コロナウイルス対策の一環で、自宅での食事の機会が増える中、マスメディアやSNSで関連する食情報も多くなり、全国的に、家族ぐるみで「食」への関心が高まってきたことは、ありがたいことだと受け止めていました。
しかし、ほとんどが「料理」情報で、肝心の「食事」情報が少ないことを嘆き、「食事」についての基本的な発言が必要だと、悶々としておりました。
日本食育学会での特別講演は、貴重な機会でしたのに。

昨日、誌上開催の講演要旨集が届きました。
「日本の食・食事でとらえることの大事さ」検討のたたき台にしていただければ幸いです。 
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特別講演Ⅱ「食育と和食文化の融合」

足立 己幸
女子栄養大学名誉教授・名古屋学芸大学名誉教授 

はじめに:本学術大会のコンセプト“つなぐ、織りなす”に触発され、本講演では、人間の「地域での食の営み」、「食行動」や「食事」自体が、しなやかでたくましく“つなぐ、織りなす”でつくりだされていること、そうした食の本性を最大限に発揮する「食」育が望まれていること、その実現には、日本人の食生活文化の基礎になってきた和「食」の底力発揮が必須であることを、具体的な事例を共有しながら、考えたい。

1.実践現場から求め続けてきたのは「食」育
○“私や家族は、何をどれだけ、どのように食べたらいいの?”の質問に、その人の生き方、くらしや地域とのかかわりの中で、実行できる答え探しを支援したいと「食生態学」を創設し、仲間づくりをすすめてきた。栄養素や食材料だけでなく、グーッと人間につながっている「料理選択型栄養・食教育」の提案。その具体的な方法は日本人が生活文化の中で育くんできた、和食の智恵「主食・主菜・副菜を組み合わせる食事」にあった。栄養、味、食生活力形成、共食、食材自給率などの各面がプラスにつながっていることを検証し、栄養・食教育/活動につなげてきた。1食のエネルギー量を弁当箱のサイズで選び、主食3・主菜1・副菜2で詰め合せる「3・1・2弁当箱法」開発は「適量でおいしい1食」が簡単に準備でき、世代を超え、栄養リテラシーの差を超え、家族や仲間がつながりやすい。栄養素や食材料選択法を包み込んだ「食事」育であり、「食」育であり、多くの実践の輪をつなげている。

○「地域の食の営み」の循環全体がうまく回ることを視野に、自分(たち)の得意技や役割を確認し、質の高いつながりを果たす。生産から食卓まで、生きる力、地域力の形成、次の労働力形成へとつながり、高まっていく。まさに、「食のパーツ育」から、パーツのつながりを重視する「食」育の具体的視野である。

2.今、日本の行政や教育がつながって、全国展開をすすめているのも「食」育
例えば、食生活指針(2000年、2016年一部改訂)、食事バランスガイド(2006)、食育基本法(2006)、健康日本21(第2次)(2013)、第3次食育推進基本計画、たのしい食事・つながる食事(2016)、健康な食事(2017)、日本の栄養政策(2019)、等々。

3.国際的に評価されてきたのは和「食」
○ユネスコ世界無形文化遺産登録の要件は特定の和食材や和料理だけでなく、和「食事」や和「食文化」
○国際学会や国際協力で評価が高いのは日本各地の「地域性を活かした食事法やその食環境づくり」。

4.今、全世界がゴールを共有し、その達成に貢献できるのは、“和「食」を活かした「食」育”
○SDGs の「5つのP」と17のゴールのすべてにつながる
○世界中に浸潤する「新型コロナウイルス」の感染拡大防止も発症防止も、ひとり一人の健康力と人々のつながり力への期待。
これから:「東京栄養サミット2020」、「東京オリンピック・パラリンピック」「第22回国際栄養学会」「第8回アジア栄養士会議」、等次々に“日本の食の魅力”発信のチャンスが来ている。この機に、“「食」育と和「食」の融合”の魅力、それを支える日本「食」育学会への期待を実現させたいと願う。


【プロフィール】(本文:MS明朝、10.5ポイント 全角50文字×4行(200文字)以内)
NPO食生態学実践フォーラム理事長。管理栄養士、保健学博士。1958年東北大学農学部卒。東京都保健所・衛生局技師等を経て、1968年より女子栄養大学へ。教授、大学院研究科長等を経て、2006年から名誉教授。同年から名古屋学芸大学大学院教授、2011年から名誉教授。同大学健康・栄養研究所長。この間、ロンドン大学人間栄養学部客員教授、カーテン大学公衆衛生学部名誉教授、厚生省「食生活指針」策定委員会委員等。